タバコの害から子どもを守る

自らタバコを吸うのではなく、他人のタバコの煙を吸わされる健康被害を受動喫煙と呼んで特に区別されています。タバコの先から立ち上がる煙(副流煙)は喫煙者本人が吸引する煙(主流煙)に比べ有害性が格段に高く、子どもへの影響は想像以上に大きいものです。

1、胎児期における受動喫煙の影響
妊婦が喫煙をしたり、受動喫煙の場合には低出生時体重(出生時の赤ちゃんの体重が少なくなること)はよく知られた事実です。また妊娠中の喫煙は、全ての奇形の危険性を増すわけではないですが、口唇・口蓋裂両方あわせて30%、四肢欠損・短縮四肢では30%、泌尿生殖器奇形では20%の危険性が増すそうです。

2、乳幼児期における受動喫煙の影響
乳児突然死症候群:胎児の早産や発育遅延を起こし、酸素の吸入や心機能を制御する脳のシステムの成熟を阻害され、酸素不足に対する反応が障害されている可能性があります。生後2〜4ヶ月の間に起こりやすく、受動喫煙によって父親が喫煙する家庭では、突然死の危険性が2.5倍になり、両親ともに喫煙すると危険性が約4倍と上がります。
中耳炎:反復感染を含む急性中耳炎や慢性滲出性中耳炎の罹患者は、受動喫煙の害を受けている子ども達の間で増えています。
気管支炎・肺炎:ハンディキャップを背負った乳幼児ほど、家庭内での喫煙に悪影響を受けるそうです。生後18ヶ月以内に、肺炎などで入院する危険性は、正常体重児の場合には受動喫煙を受けると1.6倍増し、低出生体重児の場合は4.5倍となります。

3、少年期における受動喫煙の影響
喘息:家庭内で受動喫煙を受けると、喘息発作回数が増し、発作の程度を重くするということが、多くの疫学調査で明らかになっています。
慢性呼吸器症状:咳、喘鳴(ぜんめい:呼吸する時ゼイゼイすること)、痰が続くといった症状が出てきます。

子どもの歯肉メラニン色素沈着と親の喫煙との関係

タバコを吸うことによって肌の老化、歯ぐきの黒ずみ、歯周病を悪化させることは、良く知られています。歯ぐきが黒ずむことを歯肉メラニン色素沈着と呼びます。子どものメラニン色素沈着は通常よく見られる現象ですが、家庭内で受動喫煙での影響も少なくありません。


上の写真は両方とも5歳児のお口の中です。左の写真のお母様も喫煙者です。右の写真のお子さんは両親とも非喫煙者です。山形市の開業歯科医が調べたところ、「メラニン色素沈着あり」のお子さんの親が喫煙する割合は70%であったのに対して、「メラニン色素沈着なし」のお子さんの親が喫煙する割合は35%となり、明らかな差がありました。受動喫煙は子どもの歯肉のメラニン色素沈着を増強する作用があります。つまり、子どもの歯肉へのメラニン色素沈着をみて親からの受動喫煙を疑うのではなく、親が喫煙者の場合に子どもの歯肉にメラニン色素沈着があった場合には親の喫煙の影響が子どもの健康に及んでいる可能性が高いことを、実際に子どものメラニン色素沈着の歯肉を見せて説明することができます。

換気扇の下でタバコを吸ったら子どもは安全?

ニコチンの曝露:体内に入ったニコチンは一部コチニンという尿や唾液に分泌される物質に変化します。コチニンは食べ物や飲料水など天然には存在しないもので、ニコチンが体内に入ってこないとできないものです。血中のニコチンの半減期は約2〜3時間ですが、コチニンの場合は約17時間ですから、どれだけニコチンが体内に入ったかの指標になります。非喫煙者の尿中のコチニン濃度の平均値を1とします。

TABAKO05.GIF - 25,732BYTES

同じ部屋でタバコを吸う人がいる家庭で育った子どものニコチン濃度は約15倍ですから、15倍の受動喫煙の影響があることになります。台所換気扇の下で喫煙する場合も3.2倍の受動喫煙の影響があることになります。ましてや同じ車の中でタバコを吸う行為はもっと多くの受動喫煙の影響があると思われます。

 

受動喫煙

煙にさらされた子、虫歯2倍 京大チーム発表

毎日新聞2015年10月22日 東京夕刊

家族の吸うたばこの煙にさらされた子どもは、家族に喫煙者がいない子どもに比べて、3歳までに虫歯になる可能性が最大2倍になったとの研究結果を、京都大の川上浩司教授と田中司朗准教授らのチームが22日、英医学誌BMJに発表した。

 チームは、神戸市で2004〜10年に生まれた7万6920人のデータを解析。生後4カ月での受動喫煙の状況と、3歳時点で1本以上の虫歯や治療歴があるかどうかを調べた。家族に喫煙者がいる子は全体の55・3%おり、家族に喫煙者がいない子に比べて1・46倍になった。特に、面前で吸われる子では2・14倍に高まった。

 これまでの研究では、受動喫煙によって唾液の成分が変化し、虫歯ができやすくなる可能性が示されている。

 

 

目 次
ホーム
院長紹介、メール
ようこそ小児歯科へ
むし歯はどうやって治療する?
幼児の歯みがきワンポイント
染めだしをしてみよう
フッ素、シーラントについて
おやつを考えよう
乳歯を抜く必要がある?
過剰歯(かじょうし)はどうして抜く?
ケガをしてしまった、どうしよう!
乳歯の反対咬合(ムーシールドのご紹介)
認定歯科衛生士ご存知ですか?
ようこそ矯正歯科へ
不正咬合の治療例
矯正歯科の料金
矯正治療、こんな時どうしよう
よくある質問コーナー
はは歯クラブ便り
ダウンロードのページ